「ことば漢字」とは
(1)ことば漢字とは
「ことば漢字」は、私、いとうさとしが考えた造語です。
「ことば漢字」とは、一見ただの漢字に見えますが、よく見ると、その漢字に関係のある
意味のある言葉のひらがな等のかな文字を組み合わして構成されたアイデア文字です。
一文字の漢字だけではなく、二文字以上の漢字熟語でも作ることができます。
「ことば漢字」は、その漢字が持つ意味や関係する言葉をひらがな等を使って書く(描く)ことで、
味のあるデザイン文字、漢字アートになります。
漢字にピッタリと当てはまった言葉で作ることができた時は、自分でも感動してしまいます。
まさに「心を伝える文字アート」と言ってもいいのではないでしょうか。
「ことば漢字」は、 アンビグラムというデザイン文字の中の「Perceptual shift」と呼ばれる種類
(日本語では「振動タイプ」と呼ばれている)に属するものと思われますが、平仮名の並びが
一直線的に読めない場合が多いのでアンビグラムの定義から外れるのだそうです。
文字アートの構造から見る分類としては、平仮名を順不同に並べて組み合わせたという意味で
「寄せ字」あるいは「組み文字」と呼ぶのが適切かもしれません。
また、「ことば漢字」は、ひらがなが等の仮名文字が隠れているという意味では、”隠し文字”に属する
一種のトリックアートと言ってもいいかもしれません。
ひらがな「等」と書いたのはなぜかと言うと、カタカナを使ってもいいし、
ひらがなとカタカナの混合、または簡単な漢字との混合でもいいからです。
ただ、作品の出来としては、ひらがなのみ、またはカタカナのみで構成したものの方が
見た目として統一感があり完成度が高いと言えるでしょう。
「ことば漢字」のような文字アートは、主にひらがなで作ることが多いので
「ひらがな漢字」と呼ばれたりすることもあります。
基本的には、漢字の画数の一部分だけではなく、画数全てを平仮名を組み合わせて構成することを
目標にして作っています。
(2)「ことば漢字」の作り方
文字のデザインと言えば「フォント」「書体」というものがありますが、これは文字を印刷するために、
基本的な字体を構成する線の太さ、線端の形状などに規則性を持たせたものです。
漢字の基本的な形状を変えるものではありません。
明朝体やゴシック体などが代表的なものです。
デザイン文字には、色々なジャンルがあります。
一般的に、デザイン文字というと、ロゴや漢字を構成するパーツの一部、あるいは、全部を絵で
表現したものがあります。
「ことば漢字」は、漢字の字体を構成するパーツを、絵ではなく「おめでとう」や「ありがとう」などの
言葉のかな文字を使って表現したものです。
「ことば漢字」は、デザイン文字の一種ですが、フォントではなく、ロゴやイラスト系のデザイン文字に
属するものになると思います。
もともと漢字の成り立ちは、象形文字に代表されるように、絵を簡単化した図形が元になっています。
例えば、動物の羊の象形文字が「羊」という漢字なわけですが、
デザイン漢字として、「羊」という漢字の「ソ」の部分を「角」の絵で表現した場合、
そのデザイン手法は、漢字の成り立ちの逆をたどる表現の仕方と言えます。
また、表音文字である「平仮名」や「片仮名」は、表意文字である「漢字」の変形あるいは一部を取り出したものです。
例えば「女」という漢字から「め」という平仮名ができています。
これは平仮名ができた由来として代表的な変形の仕方ですが、
「ことば漢字」を作る場合は、それにこだわる必要はありませんし、
逆に変形をそのまま利用する場合もあります。
「ことば漢字」をデザインするコツは、字体を少し変形したり、かな文字の線の太さを調整することで、
ちょっと「ごまかす」ことです。
そして、モチーフとなっている漢字を構成する線に相当する部分を太い線にすることで、
「一見、その漢字に見える」という錯覚を起こさせるのです。
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例えば、この画像は一見すると「贈」という漢字に見えると思いますが、
よく見ると「ありがとう」のひらがな5文字でできていることが解ると思います。
どのようにして作られているかというと、「贈」という漢字の字体に沿って
「ありがとう」の平仮名の形を当てはめ、平仮名を読める程度に変形させたり、
その文字の太さを細くしたり太くしたりして調整して並べているわけです。
平仮名は丸みがある文字で片仮名よりも変形に耐えるため、平仮名で作ることが多いです。
平仮名を変形させて作るという特性上、「この平仮名の変形は無理があるんじゃないの?」
というようなものも中にはありますが、そこはご愛嬌で。
一見してその漢字に見えるようにすればいいのです。
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このような手法で作った漢字アートは、太い線や細い線で表現されますので、
必然的に筆文字のように見えますね。
ですので、ことば漢字のような漢字アートは、毛筆で書かなくても毛筆で書いたように見えるため
「筆文字風の漢字アート」と説明することがあります。
もちろん、本当に毛筆で書いても構わないわけです。
ただ、普通の書体とは違った筆運びになることもあり、上手に書くのはちょっと難しいです。
しかし、もともと平仮名を変形したデザインですので習字のように上手くかけなくても、
味のある書道の書作品として楽しめます。
また、ひらがなを並べる順番は、左上から右下に向かって書く漢字本来の書き順は無視でもOKです。
例えば、読み始める平仮名は、下からでは解りにくいのでそのようなパターンは避けたいですが、
右上からスタートするというのはいいと思います。
書き順を厳密に表現しようとしたら、ほとんど作れないでしょう(^^;)
しかし、モチーフとなる漢字の書き順に近い順番に仮名文字を読めるように作ることができれば、
見る人に分かりやすいので、心を伝える文字アート、漢字アートとしては完成度が高いと言えますし、
出来たときの感動も大きいです。
(3)作り始めたきっかけ
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実を言うと、私が「ことば漢字」を作り始めたきっかけは、当時、平成8年(1996年)頃、
参加していた発明学会で、会員の方が創作した『おめでとう寿文字』と題した作品を見たことでした。
その作品は、「寿(壽)」という漢字を「おめでとう」という平仮名で表現したデザイン文字で、
初めてそれを見たときに、「これはおもしろい!」と非常に感動したことを覚えています。
http://www.hatsumei.or.jp/idea/member.html
それから数ヶ月経ったある時、家で新聞を読んでいました。
受験シーズンであったことから、合格祈願などの広告がところどころに載っていました。
その広告の「合格」という漢字をなにげなく見ていたら、
「合格」という漢字の中に、突然「おめでとう」というひらがなが見えてきたのです。
その時は、まさに「ひらめいた!」という感じでした。
2番煎じでしたが、これを発明学会のコンクールで発表したところ、
なんと、賞をいただいてしまいました。
まさか本当に賞がいただけるとは思っていませんでしたが。(^^;)
私の場合は、1文字の漢字ではなく、2文字の熟語の漢字に当てはめているところが
新しいと評価されたのでしょうか。その辺りはよくわかりませんが。
その時から調子に乗って、この類のデザイン漢字を作り始めたのは言うまでもありません(^^;)
時を経て、その当時からちょこちょこと作りためていた作品を公表しておこうと思い、
2010年にこのホームページを立ち上げました。
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ちなみに「おめでとう・寿文字」はその後、商品化されたようです。
私の「合格・おめでとう」は、2番煎じのためか、商品化の話はありませんでした(...残念!)
その「おめでとう寿文字」を最初に考えた人のお名前は竹内久和さんですが、今、インターネットで検索すると、
その後、同じ発想で「おめでとう」で書かれた「寿(壽)」を考えた(?)人が何人かいるようです。
それはともかく、
このホームページを立ち上げたのを機に、この漢字アートの私の作品のことを「ことば漢字」と呼んでみました。
(ベタなネーミングだな...(^^;))
よくよく考えると、実は私の出身校の愛知県立熱田高等学校の校章は、
漢字の「高」をひらがなの「あ」の字でデザインしていたんですね。
これは、かな文字として言葉にはなっていませんが、
当時、校章のデザインを見て「なかなか面白い校章だな」と思っていたのは覚えています。
もしかしたら、私が「ことば漢字」を作るようになったのは、
この校章のデザインに感銘を受けたことが下地としてあったのかもしれません。
ちなみに、「ことば漢字」のネーミングを考える時に、「ありがとう」や「おめでとう」などの
感情を表す言葉のかな文字で構成して「漢字」を表現したものであるので、
「感情を表す漢字」、略して「感字」や「感じる漢字」...にしようと思いました。
しかし、「感字」「感じる漢字」を検索してみると、違うジャンルのデザイン文字に
この名前がすでに使われていたのでやめました...。
ネーミングは早いもの勝ちですからね。(^^;)
(4)著作権の問題
最近の漢字ブーム、書道ブームの影響もあって、この「ことば漢字」のようなひらがな漢字の文字アートもメディアでクローズアップされました。
また、WEBの検索エンジンで画像も検索できるようになって、簡単に画像コピーができてしまう世の中になりました。
そのためか、最近は、書道をやっているプロの方や一般の方も、このような平仮名で漢字を書いた文字アートを
作られている方を、WEB上でちらほら見かけるようになってきました。
また、一般の方で真似して書いてみたものをブログやSNS等、ネット上に載せているも方もみえますが、
その場合は、元の著作物が載っているページや元の著作者を紹介した上で載せるのがネット上の常識的なルールです。
このような文字アートが認められてきていて嬉しい反面、盗作に近いような作品を作って
販売している方もみえるようで、非常に残念に思います。
ひらがな漢字アートに限ったことではありませんが、
デザインの世界では、このような類似作品や盗作がよく問題になっています。
意匠登録や商標登録されていないデザインだからといって真似をすると、
不正競争防止法に引っかかる可能性がありますので注意が必要です。
著作権の法的には、私的利用に限っては真似をするのは自由ですが、それを使って人に配ったり販売したりしてはいけませんし、営利目的の業者が広告や商品に無断使用することは権利侵害の問題になりますので、モラルやルールは守ってほしいものです。
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電子書籍もあります。
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